20✕✕年10月13日
私は今、郊外僻地にある廃れた協会へと足を運んでいる。
仲間は途中で失った。“怪物”と化してしまったのである。
家族との連絡はもう1ヶ月取れていない。この世界ではもう会うことも叶わないかもしれない。
長年苦楽を分かちあってきた友達である佳奈の家を尋ねた。しかしそこにいたのは、禍々しくて見るに堪えない“怪物”だけであった。
20✕✕年8月11日
私はいつも通り大学の講義を受け、いつも通り帰りの電車に揺られ、窓の外からいつも通り赤い家の屋根を眺めていた。そう、いつも通りの日常をその日も送っている……はずだった。
(みゆちゃんに借りた小説、まだ読み終えていないなあ。返すの遅くなるってLINE送ろう)
そんなことをふと思い出し、スマホを手に取る。
LINEを開くと、出前館やクリアアサヒの公式アカウントのメッセージで通知が溜まっている。
「次は町田〜町田〜」
やっと15分の密閉から解放される。電車というものは何年経っても苦手である。
いつも通り電車を降りた途端、なんだかいつもと違う感覚があった。一体どうしたというのだ。
天候が急変したわけでも、体調が悪くなったわけでもない。月のものがきたのか、いや、特に下の方が気持ち悪い感じはしない。
周囲を見渡しても何一つ変わったことは無い。スーツを身に纏い、やつれた顔で電車に揺られている会社員、生意気に走り回る私立の小学生、ベビーカーを押して歩くお母さん。実に日本らしい駅の風景であった。
しかし、1つ感覚的にはっきりしていることは、この世界に対するなんとも言えぬ違和感である。
(疲れてて頭がフワフワしてるのかなあ)
その時、頭の中で「カチッ」と音が鳴った。
途端、今までに聞いた事のないものすごい爆音のサイレンが鼓膜を貫いた。
稀に聞く地震速報なんか比にならない。国民保護サイレン?昔動画で聞いたことはあるがそれとも違う音である。
とにかく大きく、そして長い間鳴っていたため、当然駅内はパニックで溢れかえった。
「戦争でも始まったのか?!」
「ついにミサイルが都内にまで来た!!!!」
「ロシアがとうとう地球までも破壊する核爆弾を落としたんだ!!もう終わりだ!!!」
様々な憶測が飛び交い、恐怖で叫び出す人が後を絶たない。その叫び声で恐怖は連鎖し、人々の不安は増すばかりであった。
すぐさまTwitterを開いてみると、どうやら世界各地でこのサイレンが聞こえたらしく、誰もその状況を理解しきれていないようだ。
音の大きさやその規模を見るに、とても個人のイタズラの範疇とは思えず、かといって周囲にこれといった事件性も確認できず、これはもう訳が分からないとしか言うことができまい。
次の瞬間、私は恐ろしい物を目にした。
つづく